教育委員会制度見直しに係る地教行法改正案に反対する(声明)

2014年4月30日

教育委員会制度見直しに係る地教行法改正案に反対する(声明)

図書館問題研究会
委員長 中沢 孝之

 図書館問題研究会は、住民の学習権と知る自由を保障する図書館の発展を目指して活動する図書館員、住民、研究者などで構成される個人加盟の団体である。当会は図書館に関わる立場から、今国会に上程されている教育委員会制度見直しに係る地方教育行政の組織及び運営に関する法律改正案(以下、地教行法改正案)に反対する。理由は以下のとおりである。
 政府は、4月4日、地教行法改正案を閣議決定した。この法案では、現行の教育委員長と教育長の役割を兼ねる首長が任免権を持つ新「教育長」の配置、首長主宰の「総合教育会議」の設置とそこでの大綱の策定、文部科学大臣による地方自治体の教育委員会への指示についての明確化などが盛り込まれている。一方、民主党や日本維新の会は、教育委員会そのものを廃止する対案を提出している。
 教育委員会制度は、戦前の反省に立って、教育が「不当な支配に服することなく」自主性と中立性を確保し、住民の自治を基盤とするレイマンコントロール(素人統制)の理念と、教育と教育行政の専門職である教育長のプロフェッショナル・リーダーシップ(専門的指導制)に基き発足した。首長から独立した行政委員会として、合議制によって方針を決定し、執行することがその特徴である。
 しかし、戦後の逆コースの中で、教育委員の公選制は首長による任命制に変わり、予算提案権や教育長の専門性を担保する制度も喪失することで、教育委員会の独立性と教育長の専門性が大幅に後退したことは事実である。こうした弱い独立性を背景として、近年とりわけ首長の教育に対する政治的介入が東京都や大阪府など各地で行なわれ、教育現場の萎縮と混乱を招いている。今回、上程された「改正」案は、こうした首長による教育行政への政治的介入を追認し、教育に対する首長の権限強化と介入を一層推し進めるものと言わざるを得ない。
 さらに図書館をはじめ社会教育については、学校教育にまして政治的中立性がないがしろにされ、政治介入を受けやすい現状にある。しかし、大人の学びは、教育内容が限定されている学校教育に比較しても幅広い思想信条を含むものであり、子どもの学びと同様に政治的中立や思想信条の自由、知る自由の擁護が必要であることは論を待たない。
 図書館は住民の知る自由を保障する教育機関である。時の為政者の政治信条に左右されること無く、資料、情報、学習の機会を提供していく使命がある。そのためにも首長から独立した教育委員会にあって自律的な運営が担保されねばならない。また、図書館には地域の記憶を保存し継承するという使命もあり、そのためにも継続的、安定的運営が求められている。
 しかし昨今、トップダウンでの指定管理者の導入や、学校図書館から特定資料を排除するなど、図書館や教育への首長の強引な介入が目立っている。また、割合は多くないとはいえ、図書館を首長部局へ移管する自治体も増加している。
 確かに、図書館は設置される地域の「土地の事情」に合わせて運営することが求められており、近年は町づくりにおける図書館の役割にも注目が集まっている。しかし、教育委員会内にあってその中立性と継続性を担保しながら、自治体の施策と連携した活動を行なっている図書館も多く、教育委員会制度が図書館活動を阻害しているかのような批判は当たらない。
 教育委員の公選制が廃止されて以降、教育委員会の独立性は幻想とも言われてきた。しかし、その独立性を一層形骸化し、または一挙に解体するのではなく、住民が参画し、住民に開かれた合議組織として教育委員会を活性化し、再生することこそが求められている。社会教育委員会、図書館協議会も同様である。
 今次の改正案は、図書館、社会教育の継続性、知る自由の確保を一層危うくする懸念があり、このような教育委員会制度の改変に反対するものである。