神奈川県立図書館に関する緊急アピール

2013年1月27日

神奈川県立図書館に関する緊急アピール

図書館問題研究会
全国委員会

 神奈川県は、2012年11月神奈川県立図書館と県立川崎図書館(以下、県立図書館)を統合し、統合後の新県立図書館においては閲覧や直接貸出のサービスを廃止、市町村立図書館を通じての貸出のみを行うという方針を発表しました。
 この方針は、法律に反している上、市町村に負担を転嫁するものです。さらに、県民の税金で蓄積、創造してきた知的財産を県民の意見を聞かずに切り捨てようとするもので、暴挙と言わざるを得ません。
 私達は下記の通りこの方針に反対し、意見を述べます。

1. 法律や基準に反する内容です
 憲法で謳われている「国民の知る権利を保証する」ことは、テレビや新聞と同じように図書館の重要な役割であり、また図書館法第二条では「一般公衆の利用に供し」と定めています。ところが、県の方針では借りることも見ることすらできない資料が大量に発生することになり、これらの法律に反することになります。
 また、2012年12月に改訂された「公立図書館の設置及び運営に関する望ましい基準」(文部科学省告示)でも、住民の閲覧も含む直接利用が県立図書館の役割であることを明記しています。

 法律を遵守し、基準に則った運営を行ってください。

2. 県民への情報開示及び討議が不十分です
 検討会の傍聴ができず、議事録も公開されていません。県民がこの政策に意見を述べたり、討議したりする場が設けられていません。

 県立図書館の今後の在り方を市町村の図書館だけでなく、関係団体、県民を含めた討議によってすすめてください。
 県民参加のもと、県立図書館のグランド・デザインを作成してください。

3. 教育施設に関して拙速な判断は危険
 図書館は教育施設であり、社会教育の大きな柱です。ゆりかごから墓場までの住民の「人づくり=社会教育」を担っています。教育は一朝一夕に結果が出るものではありません。だからこそ、じっくりと考え、変更もゆっくり的確に進め、図書館で学ぶ県民が困らないようにすべきです。

 多くの県民が意見を交換できる場を設けながら時間をかけて検討してください。

4. 県立図書館に覧・貸出の禁止はそぐわない
 例えば、財政難で自治体がスクラップアンドビルドを図ろうとする今回のような場合も、県民が自らそれを検討するのに図書館は有効です。自治体の財政状況・役割・事業効果について予算他の統計資料等を経年変化で分析する必要がありますが、それらをまとめて県内のどこかの自治体に送って閲覧することは効率的でしょうか?県立図書館であれば、利用者が想定した資料以外にも、そこに専門性を持った司書が介在し、客観的な分析のための資料の存在を知ることもできるのです。
 県立図書館には、新聞や雑誌、辞典などの参考図書、郷土資料、規格関係資料、特許関係資料などがあり、大半は形態的にも機能的にも貸出は難しいため、閲覧禁止になると「死蔵」となります。県民の貴重な財産が死蔵とされるのは、法律に反するだけでなく、文化的面、経済面からも大きな損失です。
 また、県立図書館のレファレンススキルは非常に高いものです。今後も市町村図書館への支援、連携継続のためにもレファレンスを行う県立図書館を継続してください。

 図書館機能を確認し、閲覧・貸出を継続してください。

5. 市町村立図書館に負担を押し付けないでください
 この方針では、県の財政的負担は軽減されますが、市町村にとっては逆に相互貸借の量が格段に増え、これに要する宅配便等の費用等がのしかかります。このような措置は、市町村への負担の押し付けです。市町村も神奈川県と同様か、それ以上に財政難であり、対応は困難です。
 また、貸出資料の増加だけでなく、閲覧資料の増大、閲覧場所の確保等、市町村の仕事量も同時に大きく増えることになります。

 県立図書館と市町村の図書館がともに発展し、より良いサービス提供できるような方向を目指してください。

6. 神奈川県は図書館整備が不十分な県です
 神奈川県は住民一人当たりの図書館費は全国最低レベルです。また、人口当たりの図書館数においても全国で最下位であり、県内市町村の図書館は不十分です。「県内の図書館が既に整備されている」という誤った認識で県立図書館を廃止することはやめてください。

 県内の図書館振興策を講じつつ、福祉や教育、文化を切り捨てず、人々の暮らし、更に、経済にも役立つ図書館を打ち立ててより発展させてください。

図書館問題研究会
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委員長 中沢孝之